【ネタバレ】舞台「気絶するほど愛してる!」観劇カキナグリ レポート【適宜更新】

2016/03/26、シアターグリーンBIG TREE THEATER。カントリーガールズとつばきファクトリーと須藤茉麻と演劇女子部による「気絶するほど愛してる!」の昼公演を観劇。

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以下なんとなく観劇してみての感想というかレビューというか思ったことを書き殴るなど。



ここから先は舞台「気絶するほど愛してる!」のネタバレを気にせず書くのでご注意ください。



※注:ネタバレを含むものの、紹介するための文章という訳ではなく思いついたことを順不同で書き殴っているだけのものであるため、これを読んでも劇のあらすじや概要などは分かりません。

※注:パンフレット買い忘れちゃったから単語とか内容とかパンフレットに書いてあることと重複あるいは矛盾してたらごめんなさいね。
→2016/03/31追記:パンフレット買ったよー。パンフレットに合わせて内容更新したよー。
→2016/04/03追記:東京楽日夜公演観たよー。ちょっとだけ追記したよー。

時代背景と思われるもの

舞台は1966年。劇中にもそれっぽい名前の出てくる「日劇ウエスタンカーニバル」は1958~1977年の間に年2~4回のペースで開催されていたものなので、劇の始まりはちょうどロカビリー全盛期。

ただ、1966年の6月にビートルズが来日して翌1967年中頃からGS(グループサウンズ)の一大ブームがやってくるので、GS全盛前夜とも言える。

GSに転向したジェリーさんと推し変した親衛隊が終盤でやけにあっさりと戻ってくるが、実際GSは1969年頃から急に下火となり、ブームとしては2~3年の寿命であった。

なお、ウエスタンカーニバル自体もロカビリーおよびGSブームの終焉とともに70年代頃からアイドル中心のものに推移していった。
ちなみに第一回ウエスタンカーニバル初日は9,500人、一週間で45,000人の動員ですってよ、奥さん。

50年前が舞台だから2016年の寛子たちは60代あたりなのであるなぁ。まあ後述のマダム(の元ネタらしき人)はご健在ですが。

元ネタと思われるもの

「ザ・ライガーズ」の「ジェリー」と「ザ・タイガース」の「ジュリー」

当初「ジェリー」という役名が発表されたときに当舞台の紹介記事の幾つかは「ジュリー」と誤記していて紛らわしい名前だなと思ったのだが、物語序盤で早々に脱退したジェリーさんが物語終盤でGSの「ザ・ライガーズ」として帰ってきて、まさに「ザ・タイガース」の「ジュリー(沢田研二)」オマージュのキャラクターであった。ききたん歓喜(注:浅倉樹々ではなく樹木希林)。

「ザ・カシューナッツ」と「ザ・ピーナッツ

物語中盤では船木さんと梁川さんの気になる姉妹グループ「ザ・カシューナッツ」が登場するが、これは当然「ザ・ピーナッツ」が元ネタと思われる。
ちなみにジュリーこと沢田研二の今の奥さんは田中裕子だけれど、その前の奥さんはザ・ピーナッツの故・伊藤エミ
そして現実世界での「ザ・カシューナッツ」は兵庫の青年合唱団。
あと「姉ナツミ」はまあ「安倍なつみ」意識してるよね。

「ウエスタンカーニバル」「ロカビリー三人男」

劇中で「ウエスタンカーニバル」として出てくるものは現実世界でもそのまま「日劇ウエスタンカーニバル」。「ロカビリー三人男」(平尾昌晃、山下敬二郎ミッキー・カーチス)もそのままの名称で台詞に登場していた。なお実際には「三人ひろし」なんてのもあった。

須藤さんの圧がゴイゴイスーな豪腕「マダム」とナベプロの始祖「マダム・ロカビリー」

現実世界での「日劇ウエスタンカーニバル」はナベプロこと渡辺プロの現名誉会長「渡辺美佐」とホリプロの創業者「堀威夫」および演出家・プロデューサである「山本紫朗」が企画したもの。渡辺美佐はこの成功により「マダム・ロカビリー」もしくは「ロカビリー・マダム」と称されることもある。各関係性は物語用に再編されているものの、おそらく須藤マダムという役柄の念頭には「マダム・ロカビリー」があるものと思われる。
ちなみにザ・ピーナッツは名古屋のクラブで歌っていたところを渡辺美佐に見いだされてスターへの道を歩んでいる。

ところで、ラーメン屋の女将のシーンの曲、渡る世間は鬼ばかりっぽくなかった?

寛子発案の「テープ投げ」

劇中では寛子がウエスタンカーニバルのプロデューサーが見に来ているステージでビリーの気分を上げるために仕込んだ「テープ投げ」。
(自分は未読だけれど)前述の山本紫朗の甥である和田誠の書いた「ビギン・ザ・ビギン」によると、ウエスタンカーニバルにて浅草の問屋でテープを買い込んで「芯は抜いて舞台に投げろよ」と渡辺美佐(マダム・ロカビリー)の妹・信子づてに親衛隊に依頼して始まったものらしい。

新沼さんの「ダイアナを歌う歌手:山上空二郎」と「山下敬二郎

ポール・アンカの「ダイアナ」は前述の「ロカビリー三人男」のである「山下敬二郎」と「平尾昌晃(ものまねバトル審査員の人)」がそれぞれカバーしていたが、パンフレットには役名が「山上空二郎」とあるのでおそらく「山下敬二郎」の方を元ネタにしたと思われる。

所感わしわし

これまで「ミュージカル」ってタイトルについてたのに今回ついてなくて楽曲数少ないのかなと思ったけれど、そこそこあった。
歌唱しながら物語を進行するという部分は少ないけれど、そもそも本来の意味での歌唱シーンが多かった。


おじさんはもう感情と涙腺の制御機構がダメになってるので開始数分で登場するまなかーんの設定とセーラー服と声だけで目に涙が一杯になって困るんだ。もう南海キャンディーズ見ただけで泣くかもしれない。前の人が長身で舞台中央見にくかったけど見えてたらもうダメであった。
深淵から執拗に反復される「しずちゃぁーん」っていう呼び声。
→2016/04/03追記:2日目夜と東京の楽日夜の2回見たのだけれど、楽日では「しずちゃぁーん」の言い方がちょっとあっさりめになっていた気がする。その方が自然なのだけれど、初期の余韻も捨てがたい。
→2016/04/03追記:冒頭で寛子の持っていたしずちゃんの写真、ちゃんとセーラー服を着ている写真のようだった。それ以上の詳細は見えなかったけど。


人数的に複数の役を演じたりもするのだけれど、それぞれの役が実によくハマっていた。ああ、この技術とこの特性はここだよね的な。

寛子こと稲場さんは「田舎の娘さん」から「恋する少女」を経て「女」に鮮やかに変わっていく役なのだけれど、元々これらの要素を併せ持った稲場さんにガッチリはまっていた。自分の勝手な妄想では、稲場さんは自分を変えて役になりきるというよりも役という影に自分を写しこむタイプの演者さんだと思っていて、自分の中にない表情の機微は難しいけれど、自分の中にある要素であればそれを大きくしてスクリーンに投影できるのではないかなと。

ベクトル的には違うけれど、梁川さん船木さんのザ・カシューナッツは新人ながら小ネタ芝居の対応力と歌唱力のある2人だからこそできた良ユニット。
→2016/04/04追記:東京最終公演の挨拶で船木さんは学校の部活でも演劇部に入るほど演劇が好きと言っていた(これは羽賀さんに勧められたことによるもの)。梁川さん船木さんともにアンサンブルでの存在感がピカイチであった。ステージ上からビリーたちにバーンと狙い撃ちされたときに振り向く船木さんの表情にこちらが撃ち抜かれるなど。

幸子こと森戸さんは、もう、頑固でかわいいちぃちゃんなんだけれど、病弱なお嬢様設定が似合う似合う。マダムへの抗議もかわいいかわいい。雨の中ずっとビリーを待ち続けたというのも「そうだよね、待つよね」ってなる。グルーガングルーガン。あと、アップフロントつながりでばんばひろふみ思い出すよね。「SACHIKO 思い通りに SACHIKO 生きてごらん」
→2016/04/03追記:親衛隊として薄目で踊る幸子がたまらん。精神統一している感もある。

石井さんは余所の舞台もこなして舞台慣れしているので、ともすれば舞台っぽさが前面に出てきてしまうのだけれど、今回は狂言回しの役として舞台慣れ感が良い方向に機能していた。

マーシー小関とミッキー小野田は確かに台詞は少なめなのだけれどその分表情とか動きに注目していたらいい顔しているなと。カーテンコールのお辞儀で小野田さんが「ありがとうございました」という口の動きしてたのでおじさんとりあえずうんうんと頷いておいたよ。小関さんはそもそも後輩っぽい雰囲気と邪気のない天真爛漫さを併せ持った人なので、わがままなビリー星野についていく「いいやつ」がきちんと出ていたなと。

ジェリーこと山木さんは稽古風景映像では正しいイケメン役だったので個人的には「口汚く罵るシーンも見てみたいな」と思っていたのだけれど、後半でちょっと悪い感じの台詞が出てきて「キャー」ってなるなど。まあそれほど悪い感じではないのと、最終的にはまた正しいイケメンに戻ってしまうのですが。もっとイカれた悪役が見たいのだけれど、まあお楽しみは取っておこう。キリッとした眉毛と切れ長の瞳、端正な鼻筋と横に広い口いいよね。イケメンだよね。「欲しいものがあるなら 言ってごらんよボクに」って言われたいよね。言われてるけど。
→2016/04/03追記:東京の楽日夜の山木さん、セリフの緩急やタメを工夫してた。その分、舞台演技っぽい感じが強くなってたけれど、強い演技の後のつぶやきとかを効果的に使ってた。そして演奏シーンがより自然でよりイケメンになっていた。


サンクユーベリーベリーでは山岸さんと谷本さんの歌声だけで軽く御飯三杯は泣けるおじさんでしたが、当舞台冒頭の山岸さんは「おおう。この歌声は誰だ!」っていう声でデローンと歌ってました。そして浅倉さんの怪演。
「オレのチーク卿」改め「帰ってきた親衛隊長(ただし降格)」の小片さんはThe Girls Liveの稽古風景では泣いてたけど、表情も安定感も抜群の好演であった。
やっぱりね、つばきは清く儚いグループじゃなくて、将来絶対妖艶なラフレシアになると思うの。あれは絶対人喰うよ。
→2016/04/03追記:親衛隊、やはり登場シーンかっこいいな。そして薄目とクワッの顔芸。浅倉さんは顔芸少なめではあった気がする。隊長は常時薄目が多かった気がする。そして山岸さんはやたらとクワッとしてた気がする。


新沼さんのシンガー役も気になるのだけれど、記憶力が追いついていなかった。次回見るときにはそのあたりの詳細にもちゃんと注目していきたい。
→2016/04/03追記:東京楽日に「ダイアナを歌う歌手:山上空二郎」をちゃんと見るなど。結構よい歌声であった。そして棒人形と握手したり聴衆をピンポイントで指して虜にするなどしていた。


全般的にガヤというかアンサンブルというか、そのシーンのメインじゃないところの人たちの動きも見所が多かった。各所で創意工夫してやっていて、個人的には浅倉さんがビリー星野の腕の角度をずーっと語っているあたりがツボだったんだけれど、たぶんもっといろいろなところでいろいろしてると思う。


これはもうチラシの裏に書いとけって話なのだけれど、山木さんのブログにコメントしたことがシレっと実現することがあって、℃-ute公演後のうたちゃん事変のときに「(イメージ的に離れていたのでそのときは一生そんな機会はないと思いつつ)将来、山木さんに夏DOKIリップスティックを大舞台で披露して頂ける日まで生温かく見守っていきたいと思います」と書いてたらその後のファーストツアー初日でいきなり山木さんの夏DOKIリップスティックが披露されたという話を聞いてそれを観られたファンへの嫉妬に狂ったことがある。

で、今回は当舞台の紹介記事に「ジュリー」「ジェリー」表記が混在していたこともあって、山木さんのブログに「そりゃ樹木希林も「ジュリー!」って言いますわ」とかコメントしたにも関わらず正しい役名が「ジェリー」だったので「あー、間違えて書いてしまったな」と思ってふたを開けたら、ビリーと決別して結成したのが「ザ・ライガース」ですよ。完全に「ザ・タイガース」の「ジュリー」オマージュで「ザ・ライガース」の「ジェリー」さん。

なんだ結局樹木希林であってたじゃないかと。ただ折角「浅倉樹々」がいるのだから、浅倉さんに「ジュリー!」って言わせる演出があってもよかったんじゃないかと。まあおっさんしか楽しくないネタですが(ちなみに自分もその世代ではない)。


そして福田花音先生の歌詞。「ロックンロールに掴みたい」のように男性目線の楽曲も含めてかわいい感じで溢れてる。にょんさんはあれでいて素朴でかわいい歌詞を書く。たいせいがあれでいて素直な曲を書くのに似てる。ゴリゴリの現実路線の児玉雨子と対極のファンタジー感ある。


そんなこんなで結構楽しくて、この舞台また観たい。
各所良かったのだけれど、やはり稲場さんの「しずちゃぁーん」と森戸さんの清冽な存在感がたまんない。
最後、切ないんだけどね。寛子の幸子に対する所行は納得がいかないんだけどね。でもそれがあるからずっと気になるのです。


→2016/04/03追記:今回の舞台は高いヒールでの激しいツイストダンスや歌唱シーンなどもあり、演劇専門/歌劇専門の集団とはまた違った、日々歌って踊る鍛錬を積み重ねたメンバーだからこそできる演劇女子部ならではの舞台でもあったようにも思う。


→2016/04/03追記:劇と挨拶の狭間のブギウギLOVE、劇中では舞台のあっち側とこっち側だった人たちの一幕がより男性陣女性陣の色を濃くしていて見応えがあった。


おやすみちこ。


ビギン・ザ・ビギン―日本ショウビジネス楽屋口 (1982年)

ビギン・ザ・ビギン―日本ショウビジネス楽屋口 (1982年)

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